中小企業の事業承継ブログVol.4 ~誰に引き継ぐのか? その2従業員承継~

こんにちは! 事業承継専任スタッフの横田です。

 

お盆が明けて、暑さが和らぐどころか連日35度を超える日が続いていますね。

我が家では家庭菜園をしているのですが、梅雨の長雨とその後の日照りでミニトマト以外の野菜たちの育成状況はあまり芳しくありませんでした。

スーパーなどでも野菜の高騰が目立っていますが、ほぼ毎年同じような高騰が続いています。

魚のさんまも昨年以上の不漁が予測され、こちらも価格の高騰が見込まれています。

コロナ禍で食材ロスをなくすことが叫ばれているため、「あるものをいただく」のが基本なのでしょうが、

経済を回すこととの両立はなかなか難しい課題だな、と実感をしております。

 

 

さて、今回は前回に引き続き、誰に引き継ぐのか?のうち、「従業員承継」にスポットを当てて解説していきます。

 

その名のごとく、会社にいる親族以外の従業員の誰かに経営者になってもらうことを従業員承継と呼んでいます。

一部では、従業員ではない外部者を招聘して承継する「外部(第三者)承継」なるものもありますが、従業員承継と似ている部分が多いため、

従業員承継としてひとくくりにして解説していきたいと思います。

 

従業員承継というと、経営者に子供がいないか、子供がいても諸事情により経営を任せることができないため、従業員に引き継ぐ、

といったイメージをお持ちの方が多いのではないでしょうか?

確かに、少し前までの従業員承継は上記のようなパターンが多かったのは事実です

あえて子供には継がせないといった考え方も増えてきており、

その背景としては、少子高齢化や家父長制的な考え方が薄れてきたことが要因ではないかと考えられています。

 

従業員承継は、会社の内情をよく知っている従業員に承継するわけですから、後継者の教育訓練がスムーズに進むといったメリットがあります。

例えば親族内承継であれば、一般的には後継者候補には、他社で修行→後継者として入社→課長・部長→役員→経営者といったような教育訓練を行うため、

5年から10年程度の教育機関を設けなければなりませんし、後継者の資質が見いだせなかったといったリスクもあります。

一方、従業員承継ではすでに会社の要となっている人材を経営者に推すケースがほとんどであるため、段階的に教育訓練をする時間を省くことが出来ます。

また、親族内承継のような限定された候補者からの選択ではなく、従業員という多人数からの選択ができ、

従業員に適任者がいなければ外部招聘もできるため、後継者候補の選択の幅が大きく広がります。

さらには従業員であれば雇用者と被雇用者の関係なので、万が一、後継者候補の選択が間違っていたとしても白紙に戻しやすい点もあります。

(親族内だと一度後継者候補に挙げてしまうと、撤回しづらいのは想像に難しくないですよね・・・)

後継者が勝手を知っているがゆえに従業員や利害関係者からの理解が得られやすい、といったことも従業員承継のメリットとして挙げられます。

 

しかしながら、デメリットもまたあります。

まず1つ目が、経営(代表者・社長)と所有(株主・オーナー)の分離がおきるということです。

代表者はいわゆる雇われ社長の立場であるため、株主次第で解任させられるといったリスクを常に持っていることになります。

そのため、株主の顔色を窺うようになり、会社の改善意欲が減退し現状維持思考が強くなってしまうといったことが起こりやすくなります。

そのため、事業承継に当たっては、株式の承継も同時に行うのが望ましいのですが、ここで生じる問題が2つ目のデメリット、相続問題です。

親族内承継であれば、先代経営者が保有する株式の移転は相続まで引っ張ったり、生前に家族会議を開催し合意形成をすることで解決できることが多いですが、

従業員承継において後継者が株式を譲渡または遺言よる相続で取得したの場合、遺留分(法定相続人が遺産を取得できる権利)を侵害する可能性が高くなります。

また、3つ目は後継者家族の理解、特に後継者の配偶者の理解と覚悟です。

今まではいち従業員の妻(夫)であったものが、経営者の妻(夫)となる心理的負担は私たちが想像するよりもはるかに大きなものです。

私たちの支援するお客様でも、後継者候補の奥様からの強い拒絶により承継計画が頓挫した事例は少なくありません。

そのため、後継者候補のご家族にも丁寧に時間をかけながらご理解いただくことがとても大切であると考えています。

 

 

従業員承継を進めるうえでのポイントは以下の通りです。

 

①後継者候補となる人材の後継者教育は常におこなうこと

 

親族内承継よりも候補者が多数にわたるため、後継者候補の選定や教育訓練をとかく後回しにしがちです。

また、現経営者が「自分が元気なうちは・・・」と不測の事態が生じるまで事業承継への対応を一切行わない経営者も少なくありません。

慎重にかつ早めに後継者候補を選び、後継者教育を進めていくことで、万が一のリスクを少しでも減らす努力を経営者はしなければならないと考えています。

 

②株式の移転を複数を手法を用いておこなうこと

 

先にも述べた通り、従業員承継の際には株式の移転が一つの壁として立ちはだかります。

暦年贈与によって非課税の範囲内での株式の譲渡をする、民法の特例を活用して遺留分に対する合意形成をしておく、

贈与税の猶予の特例を活用する、株式の一部は後継者が自腹を切って買い取る・・・

などの様々な手法を検討し、承継のタイミングにおける最適解を導き出し実行していくことが重要です。

 

③経営者、後継者両方の家族の合意を得ること

 

経営者は配偶者だけでなく相続人となる子供や親族、後継者は特に配偶者の理解が必要です。

経営者家族では承継における相続、特に遺留分の侵害がないかを事前に把握し、理解をもらうことが大切です。

口頭による説明や理解の表示ではなく、ぜひ書面による合意形成をして証拠を残しておいていただきたいと考えています。

後継者家族では、今後の生活の変化への不安を解消することが大切です。

会社が不況になったら、借入金が返せなかったら、といった不安を持つことは当然ですので、

確りと説明し、納得してもらったうえで承継を進めていただきたいと考えています。

 

 

いかがでしたでしょうか?

従業員承継は事業承継のパターンとしては当たり前になってきていますが、

他人であるが故の様々な要素が絡み合い、なかなかうまくスキームが組めないのも現状です。

第三者を交えてスキームを組むことで、思いがけない解決策が見いだせることもありますので、

事業承継に行き詰まりを少しでも感じることがありましたら是非お問い合わせいただければと思います。

 

※事業承継相談を随時受け付けております。

お申し込みは弊社HP「お問い合わせはこちら」よりお願いいたします。

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