皆さんこんにちは! 事業承継専任スタッフの横田です。
私事ですが、昨日、誕生日を迎えました!
ささやかながら家族のみんなにお祝いをしてもらいましたが、
仕事柄、年を重ねていくことで何が起きるんだろう?とまじめに考えてしましました。
子どもたちは私の年の割にはまだ小さいので、
子どもたちが独立するまで生きていられるだろうか?
学校に行きたいと言ったら資金の余裕はあるだろうか?
万が一今この世を去ったら成人までの生活費は担保できているだろうか? などなど・・・
たいていの方は「そんなこと考えなくてもいいだろう」で済ませてしまいますが、
何も準備をしていなくて突然不幸に見舞われた案件はいくつか経験をしています。
我が家では相続については今のところもめる要素がありません(子供がちいさいため)ので、
「財産のありかを明らかにしておく」を徹底することにしました。
(ネット口座や証券口座など、妻が知らない資産もいくつかあったりしますので・・・)
さて、今回のテーマは、事業承継を迎えようとしている社長様にぜひ知っておいていただきたい法律、
「経営承継円滑化法」についてです。
経営承継円滑化法は、2008年に制定された法律で割と新しく、ご存じない方も多くいらっしゃいますので、
今回は概要をお伝えしたいと思います。
・経営承継円滑化法とは
経営承継円滑化法とは、読んで字のごとく、事業承継をよりスムーズに進めることができるように設けた法律です。
今までは、中小企業の事業承継というと、社長一家の跡継ぎが会社の財産も家の財産も
すべて引き継ぐような風潮がまかり通っていました。
しかし、現在では家父長制的な考え方が薄らいだことや、相続の知識が浸透したこともあり、
跡取り総取りということがあまり見られなくなってきました。
(そもそも民法では、戦後から子の法定相続割合は同じですので、
総取りのような風潮がまかり通っていたことがそもそもおかしいのではありますが・・・)
このようなへんかにより、経営者が会社の株式を所有していたり、個人の所有地を会社に貸与していた場合に
相続人がもめることなく相続をすることが難しくなってきているのが現状です。
さらに、少子高齢化も相まって、自分の親族のみならず従業員や第三者に対しても、
様々な障壁があり承継がなかなか進めることができなくなってきており、
その現状を打破し、スムーズな事業承継を促すことで経済活動の低下を防ぐ目的もあり制定されたのが
経営承継円滑化法です。
経営承継円滑化法は、主に3本の柱から成り立っていますので、
ひとつずつご紹介します。
・円滑化法の柱その1「事業承継税制」
一言で説明すると、後継者が事業を引き継ぐときに株式を贈与または相続をする際、
本来発生する贈与税または相続税を猶予する制度です。
長年の経営により会社の繰越利益剰余金がうんと溜まっている経営者には非常にメリットのある制度となっています。
使い方によっては、猶予された税金を軽減できたり、最終的には0円にすることもできる制度ですが、
猶予を受けるための条件があり、原則として条件を満たさなくなった場合には
猶予された税額を即時納税しなければならないため、
承継後の事業計画や、相続シミュレーションを十分に行ってから制度を活用することをお勧めします。
※現在は事業承継税制の「特例措置」期間ですので、事業承継税制を受ける条件が通常措置より緩和されています。
・円滑化法の柱その2「民法の特例」
会社の株式が相続時にもめる要因になることは先にご説明しましたが、
民法の特例では、事業承継によって贈与または相続した財産について、
遺留分(相続人が主張すればもらえる範囲の相続財産)の計算から除外したり(除外合意)、
相続の際の株式の価格を合意時の時価に固定しておいたり(固定合意)できます。
会社の株式を後継者に集中させ、かつ相続人の遺留分減殺請求(法定でもらえる権利を主張される)を
受けるリスクを減らすことができるため、非常に有効な手段ですが、
推定相続人全員の合意を得なければならず、経済産業省へ届け出をする必要もあり、
これらの制度を活用しようとすると、どうしても相続財産の分配に不平等が生じやすくなるため、
合意形成をするまでのハードルが高いことが多いです。
・円滑化法の柱その3「金融支援」
事業承継では、株式の買い取りや納税資金、新規事業への投資などでまとまった資金が必要になるケースがあります。
そのため、円滑化法では日本政策金融公庫や沖縄振興開発金融公庫から、
より低い金利で融資を受けることができます。
また、円滑化法の認定を得た会社は、通常の借り入れとは別枠の融資を受けることができるため、
一般的な借り入れよりもハードルが低く借り入れ可能な点もメリットとして挙げられます。
金融支援については特にデメリットはないと思いますが、
事業承継税制や民法特例についてはメリット・デメリットが混在するため慎重に進めなければなりません。
事業承継税制では条件がそろわなくなったら納税しなければなりませんし、
民法特例で合意形成した後に状況が変化(後継者が適任でなかった、株価が下がった)することも考えられます。
まずは円滑化法があることを知ったうえで、何を活用するのか、しないのかは、
ぜひ専門家を活用してお決めいただければと思います。