中小企業の事業承継ブログVol.12 ~事業承継税制を知る②~

 

皆さんこんにちは! 事業承継専任スタッフの横田です。

 

 

年の瀬が迫ってまいりました。

皆様におかれましては、大変不安な1年になってのではないかと拝察いたします。

 

 

今年は特に「このまま事業を続けていてよいのか不安だ」というご相談を多く承りました。

承継やM&Aを全く考えてなかったが、コロナ禍で考えざるを得なかった、という方が多くいらっしゃいました。

 

 

このような今だからこそ、少し時間を作っていただいて、事業の棚卸をしてみるとよいかと思います。

気づかなかった会社の良いところ悪いところが、緊急時の今だからこそ見えるということもあります。

弊社では事業承継だけでなく、人事や財務のコンサルティングスタッフがそろっていますので、

ぜひご相談をいただければと思います。

 

 

 

さて、今回は前回に引き続き、事業承継税制の解説をさせていただきます。

 

前回は事業承継税制の適用を受けるための要件について、

会社、経営者(譲る側)、後継者(譲られる側)

それぞれが一定要件を満たしていなければならないことをお話しました。

 

 

今回は、要件を満たした企業が事業承継税制の適用を受けるまでの手続きについてのお話ですが、

その前に、そもそも事業承継税制の適用を受けることでどのような優遇措置があるのかを確認をしておきます。

 

現在、事業承継税制には一般措置である原則制度と、時限措置である特例制度の2種類があります。

 

 

原則制度では、

1、納税猶予割合は贈与税100%、相続税80%

2、贈与者の要件として、代表者以外も対象となる(代表者の配偶者など)

3、受贈者の要件として、後継者の1名のみ

4、5年平均で8割以上の雇用を維持

5、猶予がなくなった際は、贈与・相続時に計算した猶予税額で納税

6、相続時精算課税制度の適用対象者は20歳以上の贈与者の直系卑属

が主な要件と措置になります。

 

 

一方、特例制度では、

1、納税猶予割合は贈与税100%、相続税100%

2、贈与者の要件として、代表者以外も対象となる(代表者の配偶者など)

3、受贈者の要件として、後継者3名まで

4、5年平均で8割以上の雇用を維持が要件だが、8割に満たない場合には一定手続きで猶予継続

5、事業継続が困難な理由で猶予がなくなった際は、その時点で納税猶予額を再計算し納税

6、相続時精算課税制度の適用対象者は直系卑属以外の者も対象

7、特例承継計画の提出が必要(令和5年3月31日まで)

8、令和9年12月31日までの間の贈与・相続・遺贈が猶予の対象

が主な要件と措置になります。

 

特例制度は時限措置ですので、上記の通り令和9年12月31日までの贈与または相続が対象となることと、

かつ令和5年3月31日までに特例承継計画を提出しなければならないこととなっています。

 

 

手続きが増えているものの、事情があれば雇用の8割維持ができなくてもよいなど、

それ以上のメリットが特例制度にはありますので、

今事業承継税制を活用したいという方には100%特例制度を使っていただいています。

そのため以下については特例制度を適用するための手続きを示しております。

 

 

要件がそろっていて、事業承継税制を適用したいとなった時には、以下の順で手続きをします。

・特例承継計画を作成し、都道府県に提出(令和5年3月31日まで)

・株式の贈与等をおこなう(令和9年12月31日まで)

・認定申請書を作成し、都道府県に提出(贈与年の10月15日から翌年1月15日まで)

・贈与税の申告書提出と猶予額相当の担保の提供(贈与年の翌年3月15日まで)

 

 

特例承継計画は、企業の現状確認と、後継者が承継後にどのような経営をしていくのか、

その事業計画を5か年分記載するのが主な内容となっております。

特例承継計画に記載する事業計画は、数値計画への紐づけまでは求められていませんので、

非常に簡易な文章で構わないのですが、

後継者が中心となって経営していくにあたり、手続きのため計画ではなく、

現状分析をして、アクションプランを考え、数値計画に落としこみ、定期的にモニタリングを行う

といった本格的な事業計画を作成したうえで特例承継計画を作成することを私はお勧めしております。

ちなみに、特例承継計画の提出には、

弊社のような認定経営革新等支援機関の支援(所見の記載)が必要となります。

 

 

株式の贈与時には、前回お伝えした要件を満たしている必要があります。

特に、贈与する側は代表権を持っていてはいけませんので、

代表をおりる旨の議事録や登記などの諸手続きも事前に済ませておく必要があります。

 

 

認定申請書は贈与後の手続きとなります。

こちらも認定経営革新等支援機関の支援(確認書の添付)が必要となります。

提出期限が非常に短いですので、贈与した直後に書類を作成しておいて、

期間のはじめに提出できるように準備することをお勧めします。

また、特例承継計画も認定申請書も提出先が都道府県により異なりますので、

中小企業庁のHPなどから確認をしてみてください。

 

 

最後に税務署へ贈与税の申告書提出と担保提供です。

贈与税の申告書の提出期限も決まっていますので、

顧問税理士とご相談の上早目のお手続きをお勧めします。

担保提供については、納税猶予額に相当する額の担保を求められます。

たいていは贈与または相続した株式が担保となりますので、

担保のために特別何かを準備する必要は原則的にはありません。

 

 

ここまでが贈与または相続をした時の手続きとなります。

 

事業承継税制では、適用後も要件を満たしているかなど、

定期的なチェックと報告をしなければなりませんので、

その内容と手続きについては次回解説させていただきます。

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