経営の本質を支える5つの視点(後編)

前回の振り返り

前回の記事では、経営の本質を理解するための5つの視点のうち、

「①目的の明確化」

「②資源の最適配分」

「③意思決定のスピードと質」

についてご紹介しました。今回はその続編として、

残る2つの視点——

「④持続性と変化対応力」

「⑤組織を動かす力」

について、経理の実務と照らしながら考えてみたいと思います。

経理は単に数字を扱う部門ではなく、経営の意思を支え、組織の動きを促す役割を担っています。

その視点から経営を見つめることで、日々の業務がどのように組織の未来につながっているかが、

より鮮明に見えてきます。

④ 持続性と変化対応力:安定と変化の両立

~変化の時代における経営の責任~

VUCA(不確実・不安定・複雑・曖昧)な時代、企業は「持続する力」と「変化に対応する力」の両方を求められています。

これは単なる生存戦略ではなく、社会に対する責任でもあります。

① 持続性とは:理念と仕組みの継承

  • 企業の存在意義や価値観が世代を超えて共有されること
  • 人材・業務・文化が安定して機能し続けること
  • ESGやSDGsなど、社会との持続的な関係を築くこと
    ……つまり、持続性とは「変わらないこと」ではなく、「変わっても壊れないこと」と言えます。

② 変化対応力とは:柔軟性と意思決定の質

  • 法改正や技術革新など、外部環境への素早い対応
  • 情報と判断が流れる仕組みによる意思決定のスピードと質
  • 学び続ける文化と、役割の再定義を受け入れる風土
    ……つまり、変化対応力とは「変わることを恐れない力」と言えます。

③ 両者の統合:持続可能な変化

持続性と変化対応力は、対立するものではありません。

理念や仕組みがしっかりしている企業ほど、変化にも強く、軸を持って柔軟に対応できます。

⑤ 組織を動かす力:人と仕組みを動かす実行フェーズ

~理念と仕組みを「動き」に変える~

持続性と変化対応力が整っていても、それだけでは成果にはつながりません。

経営とは、組織を「動かす」こと。

つまり、人が動き、仕組みが回り、目的に向かって前進する状態をつくることです。

 ① 組織は「納得」で動く

  • 目的の共有:何のために動くのかが明確であれば、人は自ら動き出す。
  • 現場の腹落ち:上からの指示だけではなく、現場が意味を理解して動けることが重要。
  • 共感の設計:理念や方針が感情的にも理解されることで、動きが加速する。
    ……つまり、組織は命令ではなく、納得によって動きます。

② 動きを生む仕組み

  • 役割の明確化:誰が何を担うかがはっきりしていれば、迷いなく動ける。
  • 情報の流れ:判断材料が適切に届くことで、現場は自律的に動ける。
  • フィードバックの循環:動いた結果が見えることで、次の動きにつながる。
    ……つまり、動きとは、仕組みと人の意思が噛み合ったときに生まれます。

③ 動き続ける組織へ

  • 一過性ではなく継続性:一度動いた組織を、どう維持・発展させるか。
  • 属人性から仕組みへ:個人の頑張りではなく、組織として動ける状態をつくる。
  • 拡張可能な力:小さな動きを、大きな成果へとつなげる設計。
    ……つまり、組織を動かす力とは、「動き続ける仕組み」をつくる力です。

経営の本質:全体の流れと経理の視点

このシリーズでは、「経営とは何か」という本質的な問いを、5つの視点からひもといてきました。

1. 目的を定めることで、組織の方向性が明確になる

2. 資源を配分することで、実行の土台が整う

3. 意思決定を設計することで、判断と責任が明確になる

4. 持続性と変化対応力を備えることで、環境に左右されない強さが生まれる

5. 組織を動かす力を持つことで、戦略が実行され、成果につながる

目的、資源、意思決定、持続と変化、そして実行。

これらの視点を通じて、経営の全体像を捉え直し、経理の仕事がどのようにその中核を担っているのかを見つめ直すきっかけとなれば幸いです。

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