「売上の多い顧客=良い顧客」とは限らない

中小企業の現場では、「売上の大きな顧客ほど会社に貢献している」と考えられがちです。
しかし実態を見ると、売上が多いからといって利益が残っているとは限りません。

むしろ、忙しいのに資金が増えない背景には、採算の悪い取引先に労力が取られている構造が潜んでいることがあります。

こうした売上だけでは見えてこない構造を正確に把握し、改善するための第一歩が 「顧客別の利益管理」 です。
今回は、この管理がもたらす効果と活用の進め方を整理します。

1. 収益構造の可視化

どの顧客へ時間とコストを投下すべきかを判断するためには、顧客ごとの利益構造を把握することが欠かせません。

顧客別の利益管理によって、顧客ごとの粗利・コスト構造・利益率が明確になり、売上規模が大きくても利益が薄い顧客(負担顧客)と、売上規模は小さくても利益が残る顧客(収益顧客)を区別できるようになります。

実際に、顧客数の3〜5割ほどが利益の大半を支えている一方で、取引件数や配送回数が多い顧客ほど利益が薄く、工数だけがかかっている構造はよく見られます。
売上ランキングと利益ランキングが一致しないことも多く、「忙しさ」と「利益」が比例しない理由はここにあります。

こうした構造を可視化することで、「どの顧客に時間と人員を使うべきか」「どの顧客は条件を見直すべきか」が数字で判断できるようになります。

2. 根拠ある価格交渉・取引条件の見直しができる

採算の悪い顧客を特定できれば、感覚ではなく データを根拠とした条件見直し が可能になります。

例として以下のような打ち手が考えられます。

  • 配送頻度を抑えるため最低発注額を設定
  • 割引率やリベート制度の見直し
  • 特殊対応や短納期対応に追加料金を設定

「〇〇社向けは粗利率10%未満」といった具体データがあれば、営業担当者も値上げや条件変更を提案しやすくなり、社内外の合意形成の一助となります。

3. 顧客を分類し、営業戦略の明確化を図る

利益率と取引量を基に顧客をA~Cランクに分類し、ランクごとに営業対応や販促施策を変えることで、限られた人員や時間を効果的に活用できます。

  • Aランク(高利益・高売上) → 維持・関係強化
  • Bランク(中利益)     → 条件改善や受注拡大でAランクへ育成
  • Cランク(低利益)     → 効率化・条件見直し・撤退の検討

リソースをどこに集中すべきかを明確にすることで、ムダな活動を減らしながら全体の収益性を引き上げることができます。

4. 営業活動と評価の質が変わる

顧客別利益のデータは、営業評価の指標としても有効です。
売上数字だけで評価すると、利益を伴わない案件を取ってきた営業が高く評価されてしまう場合があります。

そんなとき、利益ベースで比較すれば、次のような成果の質と改善の余地がわかるようになります。

  • 誰が高利益案件を獲得しているのか
  • 値決めや見積りの精度はどうか
  • 交渉により利益を守れているか

営業スタイルの改善にもつながり、利益を意識した営業活動が定着しやすくなります。

まとめ|感覚ではなく、数字で顧客を見る組織へ

顧客別の利益管理は、売上重視の経営に利益の視点を加えるきっかけになります。

採算構造が見えると、優先すべき顧客と条件を改めるべき顧客が明確になり、経営資源の使い方が迷いなく決められるようになります。

まずは 粗利ベースで顧客を分類分けするところから始めてみてください。

完璧な分析より、まずは判断ができる形にすることが利益の残る組織への確かな前進になります。


弊社では、数字を作るだけで終わらせず、数字で判断し、利益の残る意思決定ができる状態を一緒に構築いたします。

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