中小企業の経営者から、次のようなご相談をいただくことがあります。
「会計ソフトから試算表は出せる。しかし、それをどう経営判断に使えばよいのか分からない。」
実際の現場でも、試算表を作る仕組みは整っているものの、経営判断に活かしきれていないというケースが多く見られます。
数字は“揃っている”ものの、“判断できる形”に整理されていないのです。
そこで本稿では、試算表を経営判断に活かすための「数字の整え方」について解説します。
試算表の役割と限界
試算表は主として帳簿残高の確認や決算書作成の基礎資料として作成されます。
そのため、意思決定を目的に運用しようとすると使いにくい面があります。
たとえば、
- 売上が増えている
- 利益が減っている
という事実は分かります。
しかし、
- 売上をあと1,000万円増やしたら、利益はいくら増えるのか
- 売上が1割減ったら、赤字になるのか
- 今の固定費水準は適切なのか
といった問いには、そのままでは判断しづらい構造になっています。
経営に必要なのは「結果の確認」ではなく、「次の行動を決める材料」です。
そのためには、数字を“判断しやすい形”に整え直すことが有効です。
数字を整理する前に明確にすべきこと
数字を整理する前に、必ず明確にすべきことがあります。
それは、「自社の何を判断したいのか」です。
- この事業を伸ばすべきか、縮小すべきか
- 売上を拡大しても利益は十分残るのか
- 削減すべきコストはないか
- 新たな投資をしても資金繰りは安全か
この意思決定のテーマが決まると、判断材料として把握すべき情報が定まります。
例えば、
- 事業ごとの採算性
- 固定費が今の売上規模に対して重すぎないか
- 売上が増減したときに利益がどれくらい増減するのか
- 資金繰りの余力
等です。
「見るための資料」ではなく「決めるための資料」を作るという視点が重要です。
中小企業がまず整えるべき3つの視点
はじめから、複雑な管理会計制度を導入する必要はありません。
まずは次の3つを押さえるだけで、経営の見え方は変わります。
① 仕事(商品・サービス)単位の利益を把握する
会社全体の利益だけでは、どこを伸ばすべきか判断できません。
主力商品やサービスごとに売上と費用を分けてみましょう。
「利益を生んでいる仕事」と「思ったより利益が出ていない仕事」が見えるだけで、経営の打ち手は具体化します。
最初は大まかな区分で十分です。
② 固定費と変動費の分解
費用を性質で分けることは、利益改善の出発点です。
- 固定費:売上に関係なく発生する費用
- 変動費:売上に比例して増減する費用
この区分ができると、
- 売上が1割増えたら利益はどれだけ増えるか
- どの売上水準で赤字になるのか
といったことが見えてきます。
利益改善を具体的に議論するには、この整理が役立ちます。
③ 月次推移によるトレンド把握
単月の数字は、一時的な要因の影響を受けやすいものです。
その月に大口受注があったといった理由で数字は大きく動きます。
そのため、最低でも3~6か月分を横並びにして推移を見ることが大切です。
数字を“点”ではなく“流れ”で捉えることで、本当の傾向が見えてきます。
例えば、次のような視点です。
- 売上が伸びているのに、利益率は下がっていないか
- 人件費の増加が、売上や粗利の伸びを上回っていないか
- 広告費の増加は、その後の売上増につながっているか
また、季節変動のある業種では、前年同月との比較も有効です。
「去年の同じ時期と比べてどうか」を見ることで、一時的な増減なのか、構造的な変化なのかを判断しやすくなります。
数字の傾向に早く気づくことが、問題の早期発見と、先手を打つ経営につながります。
最後に
試算表は重要な資料です。しかし、それだけでは経営判断の材料としては不十分です。
経営に必要なのは、「利益が出たかどうか」ではなく「なぜ出たのか」「どうすれば増えるのか」を説明できる状態です。
この第一歩となるのが、数字の見方を自社に合わせて整えることです。
自社の試算表が、経営判断に本当に活かせているか確認してみませんか。
現在お使いの試算表をもとに、「どこをどう整えれば、判断に使える数字になるのか」を整理する60分の簡易診断を行っています。
✔ 事業ごとの採算が見える形になっているか
✔ 固定費の負担構造を把握できているか
✔ 売上変動に対する利益の動きが説明できるか
その場で、具体的な改善ポイントをお伝えします。
売り込みを前提とした場ではありません。
まずは、自社の数字の現状を客観的に確認してみませんか。





ホーム